キモ味噌土手鍋
カワハギというと・・・・・・カワハギを使った料理というと、まず考えるのはキモ。このキモの使いどころが非常に頭を使うところである。刺身もいいが、こう寒くなるとやはり鍋がいい。
もともと自分は、カワハギというと鍋が好きで(昨シーズンのように)一尾、二尾という貧果では鍋も寂しき独り鍋ってことになりかねないが、やはりそれなりに釣果があったときは、みんなで楽しく鍋を囲むのが素敵である。横に刺身があったとしても、あくまで主役は「鍋」なのだ。
だから今回紹介する料理は、カワハギの鍋としては最高級に属すると個人的には思っている。もちろん大好きな鍋だし、あまつさえキモを存分に使っているからである。
鍋はまず普通に昆布ダシをとったところに具材を放り込むだけ。これも好きなものを何でも入れればいいという気安さがいい。今回は味噌味の鍋ということもあり、ゴボウのささがき(下に入れているので、写真では見えないかもしれないが・・・・・・)、モヤシ、シイタケ、ネギ。それにぶつ切りにしたカワハギに船で隣のおじさんからいただいた心づくしのカナガシラ。カワハギもカナガシラもいいダシが出そうで、期待感が持てる。
さて味付けだが、これはキモと好相性な味噌味で決まり。まずはキモを3尾分ほど用意する。できればキモパンのカワハギを3尾用意したい。キモの小さい、サイズの小さなカワハギだとややコク不足な感があるだろう。その場合は、素直にちり鍋が正解か?
3尾分のキモ(要するに鍋に入れるカワハギと同数のキモと理解いただきたい)を叩く。そこに同量のキモと万能ネギの小口切りを少々。さらによく叩いて滑らかな味噌になったところを土鍋の土手に塗る。適当に、豪快に塗ってしまったほうが野趣味があって良い。
あとは蓋をして煮立つまで待つのみである。煮立つまでの間に土手の味噌は、ダシの中にはんなりと溶けてゆく。ダシとキモのコクを味噌が一つにまとめて、いつもの魚や野菜を別次元の高みに変化させる。煮立ってもなお残っている味噌は、蓋を取ってから溶かし込めばよい。一見脇役のキモは、しかし十分にその存在を主張し、具材にしんねりと甘さをまとわせてゆく。キモを入れたダシで煮た具材を食べていたように思えて、この料理は、畢竟具材の力を借りてキモを味わっているのではなかろうか。
なかんずく鍋に放り込んだ野菜たちは、煮えるにつれダシの味を染み込ませてゆき、本当に美味しくなる。もう箸もとまらない。いつの間にかお腹いっぱいである。ちなみに食べるときに、七味をちょいと振るのも良い。
たらふく鍋を堪能したら、鍋の最後のお楽しみ。残ったダシにうどんを入れて、しばらく煮る。それをダシごとよそってすすりこむ。軽く七味を振ったうどんを食べて、最後の一滴までダシを味わい尽くしたら、後には至福の時だけが残る。
この料理の評価(満点:星5つ)
★★★★★
文句なし。カワハギ料理、ここに極まれりの感!
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